
DXや生成AIの活用が企業の競争力を左右する時代において、多くの企業が「スピード」と「精度」の両立という課題に直面しています。技術の導入そのものが目的化してしまうケースも少なくない中で、いかに現場に根ざした実効性のあるDXを実現するかが重要なテーマとなっています。
今回お話を伺った株式会社法学館では、一問一答アプリの構築・展開から社内での生成AI活用まで、スピード感を持った開発を推進しています。同社の春原氏が重視しているのは、単なるシステム開発の成否ではなく、「現場を理解し、責任を持って行動できるパートナーと共に、スピード感を持ってDXを進めること」です。
法学館とは法律資格の受験指導校「伊藤塾」を運営しており、司法試験などの法務関連の講座や研修から、研究所の運営まで、法律・法務関連事業を幅広く展開している企業です。また法務関連以外にも、アフタースクール、日本語学校、ベトナム料理店などの多様な事業を展開しています。
本記事では、法学館とGenAiによる協働を通じて明らかになった、基幹を起点としたDX推進の実践知、発注判断の背景、そして“共創型DX”を支える考え方と仕組みについてご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
目次
発注の背景
GenAiに発注いただいた背景について、春原氏は次のように語ります。
「2024年の春頃、短答アプリ(現在のIt’s Dに相当)の開発企画が進行していましたが、当初の計画ですと基幹システムとの連携が難しく、ユーザー同期を手作業で行わざるを得ないなど、現場の運用工数が増加する懸念がありました。
この課題を踏まえ、開発会社を公募サイトで募集したところ、GenAiさんが候補として挙がったのが最初のきっかけです。」

決め手は“動くデモ”――論より証拠のスピード判断
GenAiに決めた決定打について、春原氏は次のように語ります。
「発注の決定打は、初回面談のその場で提示された動くアプリのデモでした。
私の考えとして、“論より証拠”であり、実際に動くものを示せるかどうかが最も重要だと思っています。通常、初回の打ち合わせはヒアリングのみで終わることが多いのですが、GenAiさんは『弊社であればこのように実装します』と、その場で動作するデモを提示してくださり、そこで技術力の高さを強く感じました。
実際、社内のIT知見のあるメンバーに資料を共有した際にも、『すでに動いているのか』と驚きの声が上がりました。それほど、商談の段階で“実際に動くもの”を提示してくれたことは、とても強い印象として残っています。」
初期フェーズ――要件を“決めにいく”質問力
初期段階の打ち合わせや提案を通しての印象を春原氏は次のように評価します。
「打ち合わせの際、GenAiの三浦さんからいただく質問の精度が非常に高く、それに回答していく中で要件が自然と整理されていく感覚がありました。的確な質問を重ねることで、プロジェクトの方向性を確定させるリード力が非常に助けになりました。
また、議論が発散しかけた際にも、『このような選択肢があります』と複数の代替案を示してくださり、思考を整理しながら前に進めることができました。その姿勢と理解力の高さには大きな信頼を感じました。
さらに、当時プロジェクトリーダーを務めていた方の熱量にも強い印象を受け、真摯にプロジェクトへ向き合う姿勢に好感を持ち、“この人たちとならやっていける”と確信しました。」

“受託”ではなく“共創”――自分事として挑む姿勢
プロジェクトの進行で印象的だったのは、攻めの提案と“自分事化”の姿勢だったと春原氏は振り返ります。
「GenAiさんは、依頼されたことをただ実行するのではなく、開発案件そのものを自分事として捉え、『自分であればこうします』という主体的な提案を常に行ってくださいました。その攻めの姿勢が非常に頼もしく、私自身も好感を持っていました。
また、ビジネス部門のメンバーからも『本当に引っ張ってくれるので助かる』という声が上がっており、チーム全体を動かす推進力を感じました。
一方で、私自身も引っ張られすぎないよう意識的にバランスを取りながら進行していましたが、GenAiのメンバーが『できる』と断言したことについては、その言葉を信頼して任せられる安心感がありました。」
成果の実感――“基幹連携”を社内の共通言語に
プロジェクトを通じて得られた成果について、春原氏はこのように述べています。
「最大の成果は、『基幹システムとの連携を必須とする』という前提を社内全体で統一できたことです。
お客様情報を含むすべてのデータは基幹システムに集約されており、それを連携対象から外してしまうと、データ処理に人手が介在し、現場の運用が破綻してしまいます。この点を関係各所で明確に共有できたことで、システム開発における判断基準が一本化されました。
さらに、この取り組みにより、外部ベンダーが基幹を無視した形でシステムを導入するリスクも抑制できました。今では、基幹システムを起点とした開発方針が社内の共通認識として根付いています。」

また、ビジネス面での成果についても次のように述べています。
「It’s Dの利用権利を含む講座の売上が好調で、受講生の利用状況も安定して確認できたことが大きな成果でした。GenAiと弊社の講座企画責任者が連携し、企画とITの両面から成果を出せたことを非常に嬉しく思っています。
この成功をきっかけに、社内でも“ITで利益を生み出す”という意識が醸成されつつあります。今後は、模試のマークシート採点を自動化する仕組みなど、さらなる業務効率化・収益化を見据えた開発を検討しています。」
GenAiのサポート体制――プロアクティブと“反応の速さ”
GenAiのサポート体制について、春原氏は次のように評価します。
「非常にプロアクティブな対応をされる印象です。こちらから依頼する前に課題を察知し、自ら修正や改善を行ってくださる点は率直に高く評価しています。要望へのリアクションも極めて速く、常にこちらの期待値を上回る対応をしていただいています。
また、チームとしても多様な強みを持つ人材がそろっており、若手ながら明確な武器を持つメンバーが多い点は大きな強みだと感じています。こうした個性と実行力を備えた組織であり続けてほしいと考えています。」

継続の理由――理解資産×スピード=優位性
GenAiとの協働を継続したい理由について、春原氏は次のように述べます。
「継続の最大の理由は、既に共通認識が構築されている点にあります。弊社の業務構造や基幹システムの特性を十分に理解していただいているため、ゼロから説明する必要がなく、開発の初動を大幅に短縮できることが大きな価値だと感じています。
今後は、この共通認識という資産を基盤に、GenAiさんの持つ圧倒的なスピード感を掛け合わせ、さらなる発展を目指していきたいと考えています。」
さらに、協業関係の意義についても次のように言及します。
「現在では、GenAiさんと協業していること自体が、他社に対する優位性になりつつあります。技術的な提案力と実行スピードを兼ね備えたパートナーと共に動けることが、競合との差別化要因になっていると実感しています。今後もこの関係を継続し、より強固な連携を築いていきたいと考えています。」
「自責」で進化を導く――DXを担う覚悟と哲学
自身の役割について、春原氏はこう語ります。
「当社におけるデジタル領域に関する事項は、すべて私の守備範囲であると考えています。私が関わるからには、どの領域においても、着手前よりも進化した状態に引き上げることを常に意識しています。」

また仕事をする上で意識していることについても次のように述べています。
「仕事上で意識しているのは、『とにかく自責で考える。』ということです。
この考え方は、前職の経営者からの言葉が原点にあります。『お客様やチームメンバーのせいにせず、自責で考えているか』という問いかけを常に受けており、その姿勢が今の自分を形作っています。
開発案件がうまく進まなければ自分の責任と捉え、たとえリリースを成功させたとしても、その裏で運用負荷が増していれば、それもまた自分の責任と考えます。こうした“自責”の意識のもとで、関係者それぞれの立場を理解しながら、より良いシステムの実現を目指すことを心がけています。」
これから――“必要対応”から“先回りのR&D”へ
今後の取り組みについて、春原氏は次のように展望を語ります。
「これまでは、業務上の必要性に応じて発注せざるを得ないものを中心に開発を進めてきました。今後は一連の対応が一段落した段階で、会社全体の将来像を見据え、先手を打ってITによる業務置き換えを進めていきたいと考えています。
具体的には、教材やテキストの変更管理をAIで自動化できる仕組みを検討しています。例えば、ある教材のAという箇所を修正した際に、AIがその変更を解析し、『BやC、Dの内容も連動して修正が必要です』と示唆できるようなシステムを構想しています。」
この構想は、法改正対応など、複数の教材や資料の改訂が同時に発生するシーンを想定しています。
「現状では専門知識を持つ担当者が人手で対応しており、負担が大きいのが実情です。AIによる変更点の検出と修正提案が可能になれば、教育業界だけでなく、日本全体のIT活用が大きく進化すると考えています。」

GenAiを勧めたい会社像――「完成形はまだ曖昧」でも大丈夫
同様の課題を抱える企業に対してGenAiを推奨する理由について、春原氏は次のように語ります。
「GenAiさんの最大の強みは、漠然としたアイデアを明確な形に落とし込む力にあると感じています。完成形が明確でなくとも、やりたいことが言語化しきれていない段階であっても、三浦さんと対話を重ねることで構想が具体化し、すぐに形として提示される点が非常に優れています。
実際、商談段階から動作するデモを提示していただいたこともありました。また、ウェブ経由でのやり取りから意図を的確に汲み取り、『こういう方向性ではないですか』と提案した上で試作品を提示していただけたことも印象的でした。
このように、明確な完成イメージを描ききれていない企業にとって、GenAiさんは伴走しながら構想を具現化してくれる最適なパートナーだと考えています。」
最後に――“基幹を軸に、ともに走る”DXへ
春原氏が一貫して語ったのは、「基幹を軸にしたDX」と「共に走るパートナー」の重要性でした。
どれほど新しい技術を導入しても、現場を理解せず、基幹と切り離された仕組みでは意味がない。真のDXとは、現場の課題に寄り添い、責任を持って行動する仲間と共に築いていくものだといいます。
GenAiと法学館の協働は、単なる受発注の関係を超えた“共創型のDX”の在り方を示しています。
スピードと責任、そして信頼を共有するパートナーとともに歩む姿勢こそが、変化の時代を生き抜く企業に求められる“本当のDX”なのではないでしょうか。
会社概要
- 会社名:株式会社法学館
- 所在地:〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町17-6
- 設立年月日:1995年5月3日
- 代表者名:
・法学館館長 伊藤 真
・代表取締役社長 伊藤 真輝 - 公式HP URL:https://www.hogakukan.com/index.html